お知らせ

カトリック豊島教会 > お知らせ > 豊島教会新聞 2020年7月号 主任司祭 巻頭言

豊島教会新聞 2020年7月号 主任司祭 巻頭言

 

 

ペトロ・ネメシェギ神父を偲んで         

  

                              主任司祭 フランシスコ  田中隆弘

 

  上智大学神学部ホームページにある訃報にあるようにペトロ・ネメシェギ神父さんが、6月13日に帰天されました。97年の生涯でした。ネメシェギ神父さんはカトリック神学院・上智大学神学部で教義学(恩恵論、三位一体論、秘跡論)を教えていて、わたしも「三位一体論」をはじめいくつかの課目の授業を受けました。ある時、授業が始まる前にネメシェギ神父さんはパリ・ミッション会の神父さんと立ち話を教室前の廊下でしていました。授業時間になると、神父さんは教室に入り授業をはじめました。2~3分だったと思いますが、神学生のわたしたちが唖然とした様子を感じ、自分がフランス語で授業をしていることにようやく気がつき、何事もなかったように日本語で話しはじめたことがありました。数ヵ国語を自然に自由に話すことができるので、自分が何語で話しているか気がつかなかったのです。うらやましい神さまからの「恩恵」です。

  また、「ネメシェギ神父さんはイエズス会の神父であるにもかかわらず、教区のカトリック神学院に一人寝起きしながら、本当に気さくに、教区の神学生との触れ合いや交わりを、実に大切にし、楽しんでいました。」(高木神父談)

  そんなネメシェギ神父さんは休けい時間に時々、ホールにあるピアノを弾いていました。暗譜でモーツァルトのピアノ・ソナタを実に見事に、楽しそうに演奏し、さらに即興で気がおもむくままに弾くことがありました。しかし、それはモーツァルトではなく、いかにもバルトーク風でした。(同じハンガリー出身)

  お母さんがピアニストでバルトークから教えを受けた、と人から聴いたことがありました。たしかに、バルトークはブダペスト音楽院でピアノ科の教授でもあり、ピアノ教師としても活動した作曲家でした。

  しかし、ピアノ演奏を終えたあと、ネメシェギ神父さんは「天国にはいつもモーツァルトの曲が流れているんだヨ!」と目を輝かせて、幸せそうに言っていたことをモーツァルトの曲を聴く折に時々思い出します。たしかにモーツァルトは「天上の音楽」なのかもしれません。わたしはいま、そんなことを思い出しながら、モーツァルトのピアノ・ソナタ全集を聴いてネメシェギ神父を偲んでいます。