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豊島教会新聞 2021年2月号 主任司祭 巻頭言

 

 

                                                                                                                                                                         『 蟻の行列 』        

 主任司祭 アシジのフランシスコ  田中隆弘

 

 それは司祭叙階して赴任地の教会での初夏の出来事でした。

教会の休憩室に入ると、そこは蟻の行列がありました。蟻たちは畳の上にある食べ残しのスナック菓子の袋に向かって整然と列をなし、また休憩室から外へ列をなして帰って行く行列です。

2メーターはありました。わたしは唖然とそれを眺めながら、昨夜の青年たちを思い合わせましたが、そこには腹立ちはなく、興味深げに行列を観ている自分に気がつきました。

まちがいなく、わたしは「きれい好き」でしたし、今もそれはかわりありません。しかし、神父になってはじめての任地の町田教会で、少し変わりました。それは昨年引退した酒井神父さんの御蔭(加護・恩恵・力添え)です。

酒井師と共同生活をしはじめて、隣り部屋のいびきにはすぐになれました。しかし、はじめの数カ月、酒井師の片付けなさには参りました。ほんとうに、何度片付けても 2~3日すると元の山積み状態にしてくれるのです。

そしてやむを得ず、悟らせていただいた訳です。部屋が雑然としているほうが安心感があり、余りに整然として片付いているとかえって落ち着かない性格の人が現にいることを。

しかし、そう知ると我慢することではなくなりました。また同時に 「共通の部屋」 はわたしだけのものではないことも悟らせていただきました。これは貴重な体験でした。 

『ワカンタンカ(神)の望みはわたしの幸せ。幸せになり、彼をたたえることがわたしのつとめ。では、ときにそれがひどくむずかしく思えるのはなぜだろう。次から次へと問題が現れ、私の足を引っ張るのはなぜだろう。その答えをわたしは知っている。それはわたしがこの世界を他の存在と分け合っているから。わたしは自然と分け合っている。人々と分け合っている。ワカンタンカ(神)の祝福を受けた生き物たちと分け合っている。世界はわたしのものではない。』

 

  ≪ヴオッキニ 幸せへの内なる旅≫ ニコラス・スパークス/シルズ・ビリー著

 

 わたしたちは、蟻たちとも、この世界を分け合っているのです。