豊島教会新聞 2022年6月号 主任司祭 巻頭言
『 最初のしるし 「 カナでの婚礼 」 』
主任司祭 アシジの聖フランシスコ 田中隆弘
ガリラヤのカナで婚礼があって、イエスの母がそこにいた。
イエスも、その弟子たちも婚礼に招かれた。ぶどう酒が足りなくなったので、母がイエスに、「ぶどう酒がなくなりました」 と言った。(ヨハネ2・1~3)
わたしは数多くある奇跡物語の中で、「カナでの婚礼」 での奇跡物語に特に魅力を感じています。それはこの物語には他の奇跡物語においての、病人の治癒の場合のような、緊急さや奇跡の必然性はここにはあまりなく、しかも恵みを受けた当事者は、イエズスに奇跡を願っていないのです。
すなわち、この奇跡においてはすべてが好意であり、心からの思いやりなのです。
それがいいのです。つまり、当事者が気がつかず、知らないところでの危機に気づいた聖母マリアとイエズスの対話と行動。それが、わたしにとってのこの奇跡物語の魅力なのです。
たしかに、この物語には深い意味があるのですけれども、考えてみれば、
たとえ婚礼の宴会仲間をただ喜ばせるためであっても、やはりその力を発揮して
くださるイエズス・キリスト、それは私たちにとって大きな喜びであり、心の慰めでは
ないでしょうか?
そんな心やさしき聖母マリアとイエズスに賛美と感謝をささげたいと思います。