豊島教会新聞 2016年10月号 主任司祭 巻頭言
大 輪 菊
主任司祭 アシジの聖フランシスコ 田中隆弘
東京新聞の「世界と日本大図解シリーズNo. 1270」は日本を代表する秋の花「菊」でした。「秋を象徴する菊。本格的シーズンに入り、菊花展などで鑑賞する機会も増えています。日本人にとってなじみの深い花と言える菊についてまとめてみました」ということでした。
たしかに「なじみの深い花」だと思いますが、3本仕立ての大輪菊は帰天した父が毎年かかさず庭に十数鉢育てていたのでとても想い出深い花の一つと言えると思います。
「3本仕立て」とは1本の苗を、後ろ1本、前2本の計3本の枝に分け、3輪そろって咲かせるもので、草丈は120~160cm程度のものです。また「大輪菊」とは花の直径が18cm以上の菊を言います。
この大輪菊を育てるのは大変で、菊作りは春先の土作りに始まりますが、父はそのために庭の落ち葉を集めて堆肥作りをしていました。5月の挿し目、小鉢上げ、摘芯、中鉢移植、誘引、大鉢移植、施肥、支柱立てと続きます。夏場以降は、わき目かき、柳葉処理、追肥、増し土、つぼみ選定、輪台取り付けという作業があり、この間、毎日の水やり、1~2週間おきの消毒や害虫処理などもあります。
大きな花を咲かせたり、綺麗な形に整えるには大変な苦労がかかります。菊花展・菊花大会などに出展することを目的にすることなく、ただ大輪菊を父は楽しんでいたようです。手間をかけた分、菊の花が咲いた時は、また来年も育てようという気になっていたのでしょうか。家族にも誰にも自慢することなく、ただ楽しんでいました。
さて、わたしたちの豊島教会の現聖堂は献堂60周年をむかえましたが、わたしたちはその中で毎年々それぞれオンリーワンの花を咲かせてきたのではないでしょうか。それらをこの機会に想い起し、新たな歩みを聖母マリアのとりつぎのもとに共に歩んでいきましょう。